2023年03月22日、キュリー株式会社が主催する「B-side SPRING」という、高校生が集うイベントにお邪魔させていただきました。
このイベントのテーマは「国境を越えて学ぶ」であり、海外に関心を持つ多くの高校生たちと対話する機会に恵まれました。
参加者の皆さんに参加動機を聞いたところ様々な話しを聞くことができましたが、比較的多く存在していたのが将来の進路に対する悩みを解消したい(もしくはヒントを得たい)という動機でした。
今回のブログでは、高校生たちとの対話で気づいた私の進路に対する考えを書き起こしたいと思います。
進路に関する悩み
一口に「進路に関する悩み」と言っても、その中身は人によって様々です。
例えば、文系に進むべきか理系に進むべきかで悩んでいる人もいれば、日本の大学にいくべきか海外の大学にいくべきかについて悩んでいる人もいます。
また、悩む理由も人それぞれです。
人によっては大学受験や就職を見据えて有利な選択をしたいと思っている場合もあれば、海外の大学に行くという大きな決断を正当化できる安心材料が欲しいと思っている場合もあります。
今回のイベントで私が対話した高校生では、例えば以下のような悩みを抱えていました。
学校の勉強では生物が好きなので、生物で日本の大学に進学すべきか、外国人との交流が楽しいと感じるから海外生活に向けて邁進すべきか、また、それらの両立(海外の大学に生物専攻で進学)を目指すのが正しい選択なのか。
高校2年生、女性
建築・デザインに関心があり、日本のデザイン力、ブランド構築力よりも、海外のそれの方が強いと感じるため、将来は海外で学ぶことを視野に入れている。しかし、高校生である自分自身の情報収集能力や判断力には限界を感じているのも事実。大人の意見を聞いてみたい。
高校2年生、女性
海外でとある領域について専門的に学びたいという意思が明確になっているが、両親が日本の大学に進学した方が良いと言う。その理由を問うと、日本文化の中で一般教養を身につける大切な時期であるからという答えが返ってきた。一般教養は社会人になってからでも磨けるが、大学生の立場で専門領域を学べるのは今しかないと感じる。どうすべきか、アドバイスが欲しい。
高校2年生、女性
どの学生も将来のことを真剣に考え、イベントに足を運んで勉強の機会を得ようとしていることに尊敬の念を抱きくと共に、以下のような思考が整理されました。
進路選択は人生にそれほど大きな影響を与えない
学生本人からすると、目の前の進路選択は人生における一大イベントに映ることでしょう。
これからやってくる大学受験や大学生活、就職のことを考えると、そのように思えるのは当然のことだと思います。
しかし、人生を俯瞰して見ると、理系を選択したか文系を選択したか、海外の大学に行ったか日本の大学に行ったか、などの目の前の進路そのものは、人生にそれほど大きな影響を与えないと考えています。
例えば、慶應義塾大学経済学部(文系)を卒業した川鍋一朗という人物(ジャパンタクシーの元社長)は、タクシー業界のIT技術による変革を志し、社長の座を退いてプログラミングスクールに通い、タクシー配車アプリ「JapanTaxi」の原型を自ら作りました。
「カップヌードル」の開発者である安藤百福は、日本統治時代の台湾出身であり、繊維問屋を営んでいました。しかし、56歳のときにカップヌードルを発明するに至り、日本を代表する発明者になりました。
幕末に投獄された地下浪人、岩崎弥太郎は、獄中で算数や経営学を学び、後に三菱商事を立ち上げ、日本を代表する大企業に成長させることになりました。
大そうな例を挙げましたが、周囲の大人を見渡しても、若い頃に取り組んでいた内容や身を置いていた環境とは無関係の領域で成功を収めたり、幸せを手にしている人は多数います。
「進路選択に意味はない」と言うのはさすがに言い過ぎだと思いますが、高校生たちが思っている以上に、人生に大きな影響は与えないと思って間違いないと考えています。
人生は計画通りにいかない
進路選択が人生にそれほど大きな影響を与えない理由の一つに、人生は計画通りにいかないものであるという考えがあります。
将来を見据え、戦略的に「今」の意思決定をしたくなるのが人の性だと思いますが、将来の世界を正確に予測できる人などこの世に一人として存在していません。
また、ご自身の人生レベルでの幸せを左右するほどの出来事というのは、往々にして人との繋がりからもたらされるものです。
自分以外の何者かの影響を受けることで人生の幸せが決まってくるということですので、なおさら計画通りにいかないものなのです。
その前提に立つと、「将来を見据えた進路選択」など不可能とさえ言えます。
それでは、どのようにして進路選択をすべきなのでしょうか。
大切なのは、その時々で自分が心から信じられる道を選択をすること
誰しもが幸せになりたいと願うものですが、幸せは目の前の「WHAT」(何をするか、どこに行くか、など)からは得られず、「WHY」(なぜそれをするのか、なぜそこに行くのか、など)の積み重ねによって蓄積された「人生経験」がもたらしてくれると考えています。
そのため、どのような進路を選択するにせよ、自分が信じられる「WHY」を見出し、それに従って意思決定することが非常に重要です。
人によっては、「数学が好きだから」という理由で理系への進学を決める人もいれば、「英語力は社会人になったときの競争力になるはずだ」という理由で海外の語学学校への進学を決める人もいると思います。
どちらが良い悪いではなく、どのような意思決定プロセスがそこにあったのかが重要です。
優柔不断さや臆病さは武器になる
「私は優柔不断だから」とか「臆病者だから」などと、自分の信じる道を選択することに自信を持てない学生もいるかも知れません。
しかし、優柔不断さや臆病さは視野の広さや慎重さの現れであり、悪いことではありません。
むしろ、様々なシナリオや最悪の事態を想定できることから、調査や事前の準備にしっかりと取り組むことができる強さを持っています。
「心配性の人が心配しないほどの確信」に至ったとき、その道の確からしさのレベルは他を圧倒するはずです。
時間はかかるかも知れませんが、自分自身が納得をして信じられるだけの下調べを行い、意思決定をして欲しいと思います。
まとめ
幸せは目の前の「WHAT」(何をするか、どこに行くか、など)からは得られず、「WHY」(なぜそれをするのか、なぜそこに行くのか、など)の積み重ねによって蓄積された「人生経験」がもたらしてくれます。
どのような進路を選択するにせよ、人からのアドバイスを鵜呑みにするのではなく、自分が信じられる「WHY」を見出し、それに従って意思決定することを願います。
学校では正解の定義された勉強をする機会が多いかも知れませんが、人生には正解も教科書もありません。
学生時代というのは、自分自身で調べ、考え、意思決定する準備期間なのです。
そのような経験の積み重ねが、大人になったときの「より大きな意思決定」を下すときに必ず役に立ちます。
また、自分自身を信じる訓練を積み重ねてきた人は魅力に溢れ、素敵な仲間もたくさんできることでしょう。
この度は貴重な機会を頂いたキュリー株式会社をはじめとする多くの方に感謝いたします。
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